ふじ法律事務所

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就職活動生への寄稿集

 私は、平成20年9月から、平成23年4月まで、「就職活動コンシェルジュ」という就職活動生のためのサイトの1コーナーに投稿させていただいたことがありました。これは、就職活動生向けに、法律事務所の仕事を紹介したり、就職活動に役立ちそうなメッセージを送るといったコンセプトで、毎月1回発信していたものです。
残念ながら、このサイトは、今ではなくなってしまいましたが、そこに投稿させていただいていた記事をご紹介します。

<目次>

平成20年
9月 職場を選ぶってなんだろう?
10月 司法試験勉強中 ~夜、走ってました。~
11月 法律事務所のある1週間
12月 地位は人を作る
平成21年
1月 1枚の年賀状
2月 法律事務所の仕事◇◆仕事の流れ◆◇
3月 大企業、中小企業
4月 法律事務所の仕事◇◆借金問題◆◇~借金はなぜ減らないか~
5月 求職メールについて(雑感です)
6月 法律事務所の仕事◇◆遺産分割◆◇~わたしはいくらもらえるのか~
7月 就職活動としての国家試験~最近、司法書士試験を受け終えた友人の話~
8月 法律事務所の仕事◇◆骨髄提供同意立会◆◇
9月 とりあえず、本を1000冊読もう。(それらしく言うと、自分なりの教養の身に付け方)
10月 法律事務所の仕事◇◆借金問題(つづき)◆◇~借金はなぜ減るか~(前編)
11月 法律事務所の仕事◇◆借金問題(つづき)◆◇~借金はなぜ減るか~(後編)
12月 がんばるSくんについて~朝の時間の使い方~
平成22年
1月 良き人と知り合うことについて
2月 がんばる30代?◆上 ~夜の喫茶店~
3月 がんばる30代?◆下 ~勉強する時間について~
4月 リーガルマインド?
5月 そうか、同じなんだ!~仕事に向き合うこと~
6月 法律事務所の仕事◇◆離婚事件・上◆◇
7月 法律事務所の仕事◇◆離婚事件・下◆◇
8月 健康診断~自営業の自己管理~
9月 司法試験勉強中・その2~どうやったら点とれるかな?~
10月 司法試験勉強中・その3~受験仲間・上~
11月 司法試験勉強中・その3~受験仲間・下~
12月 夜のモノレール
平成23年
1月 法律事務所の仕事◇◆刑事事件~接見・1~◆◇
2月 法律事務所の仕事◇◆刑事事件~接見・2~◆◇
3月 O(オー)くんの結婚式~スピーチで心がけたこと~
4月 4月1日~新社会人になった夜~

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平成20年9月

【職場を選ぶってなんだろう?】 

 就職活動コンシェルジュをご覧の皆さま、初めまして。
東京都多摩市で「ふじ法律事務所」を経営している弁護士の斎藤と申します。
(株)gusinessの社長さんとのご縁で、このコーナーに寄稿させて頂くことになりました。

このページをご覧の皆さんは、企業への就職を考えている方が多いでしょうから、自営業者である私が、どこまで皆さんのお役に立つ文章を書けるか不安なのですが、気の向くままに読み飛ばしてください。

 いま、私は、弁護士の仕事を始めて、ちょうど4年が経ったところです。

 弁護士の仕事と言われて、皆さんがパッと思い浮かぶのは、例えば、亡くなった方の遺産をめぐる相続人同士の争いを解決したり、犯罪を犯したとして裁判所に起訴された人の刑事弁護を行うことなどでしょうか?

 もちろん、その他にも、弁護士の仕事は色々あります。この仕事に携わるようになって始めて分かってきたのですが、弁護士が取り扱う仕事は、とても広い分野に及んでいます。4年間やってみて、「まだまだ学ぶことばかりだなぁ」というのが、正直な実感です。

 そして、もうひとつ強く実感していることは、「この仕事は、人の人生に大きく関わるなぁ」ということです。

 上に挙げた2つの例をみても想像頂けると思いますが、弁護士の仕事には、人の人生のターニングポイントに関わるものが多いのです(もちろん、ちょっとした相談事もたくさんあります)。

そんな仕事内容を反映してのことでしょうか、弁護士法という法律には、一番最初に、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と書かれています。

 なんだか、すごく崇高なことが書いてあるような気がします。

 私はいま、毎日毎日、少しずつ経験を積みながら、弁護士業の習熟を図っているところです。

ここまで偉そうな文章を書いてきて、ここで、ふと、思うのです。

学ぶことは尽きないし、関わる人の人生や幸せに影響を与えるっていうことは、きっと、どんな仕事にも共通する要素なんでしょう。

皆さんはいま、社会人としての第一歩を踏み出すべき場所を模索している最中だと思います。何を重視して職場を選ぶかは、当たり前ですが、人それぞれ違うはずです。

でも、皆さんがどんな仕事に就いたとしても、その後に学ぶべきことはたくさんあるし、皆さんがひたむきに仕事に取り組むことで、多くの人に喜んでもらえるであろうということは、どんな仕事にも共通しているはずです。

 たいして社会人としての年数が長くない私が言うのもおこがましいのですが、仕事を選ぶということは、そんな大きな選択をしようということなんでしょう。

 どうか皆さん、悔いのない選択をしてください!

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平成20年10月

【司法試験勉強中 ~夜、走ってました。~】

 キャリアコンシェルジュをご覧の皆さま、ご無沙汰しております。
縁あってこのコーナーに投稿させて頂いている弁護士の斎藤です。

 このページをご覧頂いている皆さんは、今、就職活動に一生懸命取り組んでいる方が多いのでしょうね。
実は、私は、企業の就職活動をした経験はないのですが、身近にいる就職活動の経験者を見ていると、就職するためには、なんやかやで、机に向かって勉強しなければならないことも多いみたいですね。
そんな皆さんの就職活動に、私がこれから書くことが一助になれば良いなぁと思いつつ、今回は、「1日の疲れをとって明日またがんばる方法」についてです。

 さて、私が昔受けていた司法試験も、覚えなければいけないことや、読まなければいけない本などがたくさんあって、机に向かう時間の多い試験でした。お天気の良い日などに長時間部屋の中にこもっていると、相当ストレスの溜まるときがありましたが、そんなとき、1日の終わりに、夜20~30分、ジョギングに行くことにしていました。
そうすると、次の日、すっきりした新鮮な気分で勉強を再開できたのを覚えています。

 なかなか試験勉強が大変だったので、私は、「その日のストレスを次の日に持ち越さない自分なりの方法」を見つける必要性を常々感じていました。私の場合、ジョギングがそれだったわけですが、体を動かすことで、その日のストレスが、汗と一緒に流れていくような感覚が心地良く、自分に合った方法だったのかなと思っています。
受験生のときは、だいたい、週3~4回ぐらい走っていました(弁護士業を始めてしまってからは、こうした習慣もなくなってしまい、健康管理上、気になっています・・・。)

 ジョギングでなくても、何でも良いのです。
就職活動などのストレスが溜まる時期には、何かひとつ、その日のうっぷんをリセットする自分なりの方法があると良いかもしれませんね。

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平成20年11月

【法律事務所のある1週間】

◎月曜日
10:00~10:20
さいたま地方裁判所で刑事法廷(傷害事件)に出席。実家が東京都内にあるため、朝10時の裁判所着が苦しく、前日、川越に住む祖母の家に泊めてもらう。
10:20の法廷終了後、11:30まで裁判所内の弁護士待合室で依頼者(傷害事件の被告人の方)と次回裁判の打ち合わせを行う。打ち合わせ終了後、近くでお昼ご飯を食べて事務所に向かう。
14:30
事務所(東京都多摩市所在)到着。
16:00~17:00
先週ご予約いただいた新規のご相談者と法律相談を行う。
その後、事務所内でいくつかの事件の書類作成を行い、21:00ころ帰宅。

◎火曜日
10:00~11:45
昨日とは別の新規ご相談者と法律相談を行う。終了後、しばらく事務所内でデスクワーク。
16:00~17:30
東京都八王子市内の法律事務所まで、破産事件の打ち合わせに行く。
打ち合わせ終了後、事務所に戻り、デスクワークの後帰宅。昨日までは、打ち合わせ終了後に帰宅する予定であったが、本日、ある刑事事件(月曜日の事件とは別のもの)を共同で行っている弁護士から、「明日、事件記録を東京地方検察庁に読みに行ってくれ」と頼まれたため、明日こなすつもりの予定をどうしても今日中にこなさなければならなくなっての帰社。

◎水曜日
10:00~12:00
八王子家庭裁判所で離婚調停事件に出席する。
13:30~14:30
東京地方検察庁(霞が関)で刑事記録を閲覧。謄写(コピー)も行う。
17:00
事務所に戻り、しばらくデスクワークを行う。21:00ころ帰宅。

◎木曜日
終日デスクワーク。1週間のうち1日は終日事務所にいることのできる日がないと、書類作成が追いつかない。
昼過ぎ、ある事件の関係で、登記に関わる疑問が湧いてきて、懇意の司法書士新谷先生(←キャリアコンシェルジュに投稿されています! )に何日ぶりかで電話。いつもどおり分かりやすくご教示いただく。

◎金曜日
10:00~10:40
水曜日に記録を読んだ事件で、担当の検察官と打ち合わせを行うため東京地方検察庁に行く。打ち合わせ終了後、事務所に戻る。
14:00~14:45
新規のご相談者と法律相談を行う。今週は、たまたま新規の方とお話しする機会が多い週だった。
その後、しばらく事務所でデスクワーク。
15:30~15:50
千葉地方裁判所八日市場支部と、継続中の民事裁判について電話会議を行う。
19:00~
神奈川県相模原市内で、仕事で知り合った仲間6人で飲み会。みんな専門の異なる仕事に就いている。1週間の最後を、仕事で知り合った良い仲間と過ごせることは、なによりの楽しいひとときです!

 仕事をしていると、たいへんなことや楽しいことなど、いろいろなことがあります。
今回は、法律事務所でのある1週間をお伝えしました。
皆さまにも、輝かしい未来が待っておりますように。

*  いろいろなことを考慮してほんの一部だけ、事実と違う作り替えを行っています。

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平成20年12月

【地位は人を作る】

 うちの事務所には、法律事務所でのキャリアが長く、とても有能な事務局長がいるのですが(私の10歳年長です。♂)、先日、腹痛でお休みしました。
「明日は大丈夫だ」と言っていましたが、果たして無理していないのだろうかと思いつつ、ふと、彼がたまに口にする話しを思い出しました。
彼とは、私が弁護士になりたてのころから付き合いが続いているのですが、そうすると、弁護士に成り立てのころからの私の失敗談も、彼には、たくさん聞いてもらっているわけです。お互いにお酒が好きなこともあって、失敗談を肴(さかな)に居酒屋で盛り上がることも多いのですが、そんなとき、彼は、アルコールをグイと飲み干して、

 「弁護士っちゅうのは、人の生活を左右するたいへんな仕事をしているわけだ。だから君は、弁護士の地位に恥じない能力・人格を身につけないといかん」

 ってなことを、かっこよく言われたりするわけです(ちなみに、事務局長は、口元のヒゲがワイルドでかっこいいと周りの評判がよい)。
要するに、弁護士のバッジを付けていること自体で偉いなんてことがあるわけもないし、君も、バッジに恥じない自分になれるよう、努力を怠ってはいけないよって意味なんですが、口元のヒゲが威厳を加え、お話を一層ありがたくして、私の酔った耳に心地よく激励の言葉が響くのです。

 もちろん、より良い自分を目指して毎日を過ごしているつもりではありますが、つもりは別として、この1年で、果たして、どれくらいの成長があったのだろう?

 暮れゆこうとする年に思いを馳せながら、皆さま、良いお年を!

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平成21年1月

【1枚の年賀状】

キャリアコンシェルジュをご覧の皆さま,本年もよろしくお願いします。

新しい年の最初の投稿ですから,新年に見合ったお話をしようと思います。
私が今年受け取った年賀状についてです。

年賀状は、毎年、書いているときには手間がかかって大変だなぁと思うのですが、年が明けていざ自分が受け取る番になると、懐かしい友人からの便りであったり、普段は厳格な目上の方からのひょうきんな近況報告であったりと、読んでいて楽しくなります。

 今年受け取った年賀状の1枚に、昔、私が事件の依頼を受けた元依頼者からのものがありました。

私が彼(その年賀状の書き手は、現在、20代の男性です)と知り合ったきっかけは、ある万引き事件でした。
数年前、万引きをして現行犯で捕まった彼と、某警察署で接見室のガラス越しに会ったのが彼との出会いでした。
当時、彼は、何かの理由でバイトを辞めてしまっていて無職でした。
彼には、一緒に住んでいる彼女がいたのですが、彼女の収入もあったかどうか、とにかく当時の彼の生活は豊かではなかったと記憶しています。
そんな環境も影響したのか、彼はお店で万引きをして警備員に見つかり、その場で逮捕されて警察署に連れて行かれたのです。

結局、彼は20日余りを警察署で過ごした後、正式な裁判になることなく釈放されて、日常生活に戻ることができました。
そして、彼の釈放によって私の刑事弁護人としての仕事も終わり、私は彼のことを忘れていきました。

そんな彼が、久しぶりに私に年賀状をくれました。
曰く、そのときの彼女と結婚しました。子供も生まれました。
今では、ちゃんと仕事もしています。
(ただし、ご時世も反映してか、そんなに安定した職場ではないようです)
その節はありがとうございました。

  昔関わった依頼者から暖かい感謝の手紙をもらうと、本当にうれしくなります。仕事をしていて良かったなと思える瞬間です。
きっと、皆さんも仕事を通じた感謝を多くの人からいただくようになるし、また、反対に人から、思わず感謝したくなるような気遣いを受ける場面もたくさんあると思います。

今年も、多くの方から感謝の言葉をいただけるような仕事をしていきたいと思っています。
(仕事をしていると、感謝をいただけることもたくさんありますが、反対に「もっとうまくできたのに」と後悔する場面にもぶつかります。そして、うまくいかなかったことから学ぶことも多いのです。いつか機会があったら、そのようなエピソードにも触れたいと思っています。)

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平成21年2月

【法律事務所の仕事◇◆仕事の流れ◆◇】

キャリアコンシェルジュをご覧の皆さま、ご無沙汰しております。ふじ法律事務所の斎藤です。
これまでに、何回かこのコーナーに投稿致しましたが、そういえば、法律事務所が、どういう手順で案件を解決していくのか、おおまかな仕事の流れを、まだ、お話ししていないことに気が付きました。

そこで今回は、ある方(Aさん)から「お金の回収の相談」を受けた場合を例にとって、おおよその仕事の流れをお話ししたいと思います。
今回も、いつもどおり(?)、就職活動の息抜きに、ざっと読み流してみてください。

1 法律相談
法律事務所への相談は、ご相談者から、電話やメールで、相談の予約をいただくことから始まります。
このときは、相談の概要をお伺いする程度です。
さて、ご予約の日時にAさんにご来所いただき、ここで初めて詳しいお話しを伺うわけですが、その結果、その場で法律的なアドバイスをお話しして案件が終了することもしばしばです。
たとえば、Aさんから、「親戚にお金を貸したけれど返してくれない」というご相談を伺った場合、もちろんケースによりますが、「もう少し親戚とお話ししてみてはどうでしょう?それでもうまくいかなかったら、もう一度ご相談にいらしてください」といった回答にとどめることがあります。
ご親戚同士のトラブルのような場合には、もう少しお互いで話し合いをしてみたほうが良く、弁護士を入れるのはその後でもいいのではないかなと思われるケースも少なくないのです。

2 交渉
他方、Aさんが小売業者さんで、「取引先(Bさん)が、売掛金を支払ってくれずに困っています」
という相談内容だった場合はどうでしょう。
もちろん、この場合もケースによりますが、商売上の取引で品物を購入したBさんが、代金を支払わない状態が続いてしまっているのであれば、もはや、当人同士で話し合いをする段階を越えていると考えられます。
このようなとき、私が、Aさんの代理人に就任して、Aさんの代わりに、Bさんに対して、代金支払いの交渉を始めるのです。
弁護士が代理人に就任して、Bさんに対する断固とした交渉を行うことで、Bさんから代金を回収できれば、案件はめでたく終了です。

3 訴訟
皆さんは、「訴訟(裁判)」という言葉を聞いたことはあると思います。
法律事務所は、訴訟の代理が大きな仕事のひとつですから、
私が、Aさんの代理人として、Bさんに対する代金支払いの裁判を起こすことは、珍しいことではありません。Aさんは、裁判の起こし方や進め方には詳しくないでしょうから、そのようなAさんの代わりに、私が、代理人として裁判所に行って、訴訟を進めるのです。

   しかし、1・2でお話ししたとおり、法律事務所は、ご相談を受けた案件を、すべて裁判にするわけでもありません。
裁判には、時間と手間と費用とがかかります。
それに見合った成果を得られる見込みがないのに裁判を起こすことは、得策ではないと判断すべき場合も多いのです。
ご相談の内容を検討しながら、「訴訟にするべきだな」と考えられる案件について訴訟を起こします。

  今までの裁判外の交渉では支払を渋っていたBさんも、訴訟を起こされて、裁判所で、裁判官を交えて話し合うことで、代金の支払を約束してくれることもしばしばあります。これを、「裁判上の和解」といいます。
裁判上の和解が成立しないと、裁判は「判決」になります。
Aさんは、自分がBさんに対する代金の支払いを求める権利をもっていることを裁判所に証明して、裁判所に、「Bさんは、Aさんに代金○○円を払いなさい」という判決をもらいます。

4 強制執行
しかし、判決をとることは、回収のゴールにならないケースもあるのです。
Bさんが、判決のとおりに代金を支払ってくれれば良いのですが、
1~3でお話しした長い経過の中で支払ってくれなかったBさんが、判決が出たからといって、急に支払ってくれるとは、実は、限りません。
このようなとき、Aさんは、Bさんの持っている財産(不動産や預貯金など)から、判決に書いてある金額を強制的に取り立ててもらうためには、3でお話しした訴訟とは別に、もう一度、裁判所に対して手続きを申し立てなくてはなりません。これを「強制執行」といいます。
Aさんは、すでに訴訟で勝訴していますから、今回の申し立てでは、裁判所に、改めて自分の権利を証明する必要まではありません。
しかし、Aさんは、すでに取得した判決書を添えて、裁判所に、「Bさんの持っているこの財産から取り立てください」という申し立てを、もう一度行わなくてはならないのです。

  Bさんの立場に立てば、自分の持っている財産を勝手に取り立てられてしまうのは大変な不利益ですから、間違いの起こらないように2段階の仕組みが作られているのです。

  以上、少し長くなりましたが、おおよその流れはご理解いただけたでしょうか?

 この文章が、法律事務所の仕事をご理解いただく一助になれば幸いです。

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平成21年3月

【大企業、中小企業】

3月を迎え、日々の風景のうちにも、春の訪れを感じることが多くなりました。
春は出会いと別れの季節でもありますが、つい先日、保険会社に勤めている友人から、「4月に九州へ転勤することになった」という連絡を受けました。
彼とは、近いうちに一度、しばしの別れを惜しんで飲み交わす予定です。
私は門外漢なので詳しくは分かりませんが、どうやら、彼の属する保険業界というのは、一般に転勤が多いと言われている業界のようです。

そういえば、彼の勤務先とは別の会社ですが、ご懇意をいただいているある保険会社さんで、以前、人事異動の歓送迎会に交ぜていただいたことがありました。そのときは、暑い夏でした。
その保険会社さんは名の通った大企業で、したがって、歓送迎会もなかなかに盛大でした。
同じ課に所属する社員50人以上が集まって、居酒屋さん半分ほどを貸し切っての大騒ぎでした。

私のように、少人数の法律事務所(中小・零細企業?)で働いていると、何十名もの人が、同じ会社の一員として集まるなんて、したくてもできない経験です。
同じ会社の社員という、同胞意識を持った多くの先輩・後輩・同級生たちが賑やかに語り合い、出会いを喜び、別れを涙して惜しみ合うという光景は、私の体験したことのないものでした。
この日の賑やかな喧騒は、私に、大企業に対する一種のあこがれに似た想いを植え付け、いまでも印象に残る光景となっています。

・・・しかし、会社勤めの友人たちに話を聞くと、言うまでもないことですが、企業には企業の大変さがたくさんあるようです。
人が多くなれば、それに伴って人間関係のあつれきも多くなりますし、その他にも、企業勤めならではの苦労はたくさんあるようです。
私は自由業で生計を立てていますが、友人たちからは、「転勤もなければ出社時間も決まっておらず、自由業はうらやましい」などと言われることもしばしばです。
そしてそれも、当たっている側面はあると思うのです。

以上、今回も、特に結論のようなもののないお話しです。
あえて結論めいたことを言うと、「まずは与えられた環境で、精一杯、仕事に(そしてもちろんプライベートも!)励むべし」
・・・という、月並みな、なくても良いような締め言葉になってしまいそうです。

皆さんにとって、良い出会いのたくさんある春になりますように。

PS 先月、第1回目の寄稿をいただいた行政書士の渡部先生は、私が、個人的にご面識をいただいている先生です。
その縁で、本コーナーへの参加をお願いたところ、ご快諾いただくことができました。渡部先生に、長年にわたる行政書士としてのご経験・ご見識をお話ししていただくことは、皆さんの就職活動にも資するところがあるでしょうし、何よりも、先生の暖かいお人柄がにじみ出ている文章を読むだけでも、色々と皆さんの励みになると思います。ぜひ、渡部先生の投稿もご覧ください。

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平成21年4月

【法律事務所の仕事◇◆借金問題◆◇~借金はなぜ減らないか~】

世の中の不況が影響してか、最近、事務所に新しくお越しになる方のうち、借金に関するご相談をいただくことが比較的多いように感じます。
皆さんも、「多重債務」、「破産」などという言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、一度、消費者金融業者(いわゆるサラ金です)からお金を借りてしまうと、雪だるま式に借金が増えてしまい、最終的には、どうにも返済できなくなってしまうのが現状です。

 今回は、本年2月の投稿に引き続く「法律事務所の仕事」の第2回目として、借金問題に関する説明をします。

 【一度借りた借金は、なぜ、返しても返しても減らないのか】
についてです。
なお、以下の説明は、説明を簡単にするために、厳密な法律論を省いた部分もありますが、
【だいたいのイメージを説明したものである】とご了解ください。

1 ある人が、お金に困って、あるサラ金業者から、4月1日に、50万円を、利息29%で借りたとします(*a)。
2 この人の借金は、1か月後の5月1日には、利息が1万1900円付いて(*b)、
【元本50万円+利息1万1900円=51万1900円】になっています。
つまり、この人は、借りた50万円を、1か月後の5月1日に全額返済しようとすると、
51万1900円を支払わなくてはならないのです。
3 では、この人が、5月1日に、借りたお金を1万1900円だけ返したとしたら、    この人の借金の残【元本】額はいくらになるでしょうか。

正解は、【50万円】です。

  利息が付いたお金を返済する場合、
【最初に利息に充当し、余ったお金を元本に充当します】

ですから、5月1日に返す1万1900円を元本に充当して、
【元本】は残り48万8100円、【利息】が1万1900円残っているという計算はしないことになります。

4 ここで、【元本】という言葉と、【利息】という言葉が出てきましたが、
【元本は50万円で、利息は0円】という状態と、
【元本は48万8100円で、利息は1万1900円】という状態との違いは分かりますか?

5 正解は、
【利息の増え方が違う】です。
【元本は48万8100円で、利息は1万1900円】の場合、 次の1か月間で、利息は、約1万1600円増えることになります(*c)
これに対し、【元本は50万円で、利息は0円】の場合、 次の1か月間で、利息は、先ほど説明したとおり、1万1900円増えることになります(*d)。

6 返済したお金を、

【最初に利息に充当し、余ったお金を元本に充当する】のと、
【最初に元本に充当し、余ったお金を利息に充当する】
のとでは、どこが違うかお分かりになりましたか?

  【最初に元本に充当し、余ったお金を利息に充当する】
場合は、返済するごとに元本が減っていきますから、同じ1か月でも、利息の増え方が徐々に減っていきます。
そうすると、
【いつか元本はなくなるので、したがって、いつか利息が増えなくなるときがやってくる】 のです。
元本さえなくなれば、後は、そのときまでに発生した利息を支払うことで、その人の借金は、【いつかなくなる】のです。

7 これに対し、
【最初に利息に充当し、余ったお金を元本に充当する】
場合は、その人が、毎月1万1900円ずつ返し続けている限り、その人の借金は、【いつまでもなくなりません】
せっかく、ある月に、1万1900円返したとしても、それは、その1か月間に発生した利息を 支払っただけで、【元本】はまだ50万円まるまる残っています。
そうすると、その後の1か月間で、また利息が1万1900円増えてしまいますから、 その次の月に1万1900円支払ったとしても、やはりそれは、その1か月間に支払った利息を支払っただけで、 元本は、1円たりとも支払ったことにならないのです。
つまり、
【いつまでも元本が減らないので、したがって、いつまでも同じように利息が増え続ける】のです(*e)。

8 その人の借りている会社が1社だけなら、まだ、ある時にまとまったお金を返すことで、 借金の総額を減らすことができるかもしれません。
しかし、1社だけから借りれば十分で、他のサラ金業者からは借金しないでも生活できる、 という人は、現実には少ないのです。
あるとき1社からお金を借りて、またあるときに苦しくなって他の会社からお金を借りて・・・
というふうに、通常は、お金を借りる会社が増えていってしまうのです。

仮に、ある人が5社から50万円ずつ、合計250万円を借りたとすると、 その人は、毎月、【1万1900円×5社=5万9500円】を返したとしても、 【すべて利息に充当されるだけで、元本は1円も減らない】計算になります。
つまり、この人は、毎月約6万円近く支払っているにもかかわらず、【永久に元本が減らず、したがって、永久に借金は減らない】ことになってしまうのです。
この人は、毎月5万9500円を10年間返し続けたとしても、 10年後、借金の総額は250万円のままなのです。

9 【借金はなぜ減らないか】
その仕組みをお分かりいただけましたか?
もっとも、以上の説明だけだと、
「一度借金してしまったら、苦しい生活が待っているだけなのか・・・」
ということになってしまいますが、実は、法律事務所では、
【法律の枠組みの範囲内で、借金を減らすことができる】のです。
最近良く見かける「借金を減らします」とか「過払金(かばらいきん)返還」などという広告文句は、 このことを言っているのです。
では、【法律の枠組み】って詳しくはどういうものなの?
という疑問が湧いてくるかも知れませんが、本稿では、その説明は割愛します。
説明が長くなってしまいますし、また、このコーナーでは、【借金はなぜ減らないか】という仕組みを なんとなく理解していただいて、皆さんに、身近な法律問題に関する関心を持っていただければ十分目的を達したと考えているからです。

  借金をしないに越したことはないと思いますけれど。

 ◎注釈◎
*a テレビCMなどで見かける大手のサラ金業者も、一昔前までは、20%台後半の利息をとることが通常でした。
最近では、18%程度まで下がってきています。
*b 端数は四捨五入してあります(以下、同じです)。
ちなみに、計算式は、【50万円×29%×(30日/365日)】です。
*c 計算式は、【48万8900円×29%×(30日/365日)】です。
*d 厳密に言うと、同じ1か月間でも、その1か月が何日まであるかによって、利息の増え方は少し変わります。
*e 本当は、一度借りた会社からはもうお金を借りないということはなくて、毎月毎月、同じ会社に対して返済と借入を繰り返すのが現状なのですが、ここでは、説明の便宜から、ある会社から、最初にお金を借りて、あとは返済するだけ、というモデルケースで説明しました。

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平成21年5月

【求職メールについて(雑感です)】

 私の法律事務所では、インターネット上にホームページを公開しておりますが(「ふじ法律事務所」で検索してくださいね!)、ホームページの中に、当事務所のメールアドレスを載せています。

 アドレスを載せた目的は、新規の依頼者の方に、当事務所へのアポイントの手段として使っていただくためです。
しかし、私も予想していなかったのですが、たまに、そのアドレス宛てに、「事務職員として、私を採用していただけませんか?」といった内容の、求職のメールを頂くことがあります。

 せっかくメールを頂いた方には申し訳ないのですが、ただ今、当事務所では、事務員さんを募集しておりません。
そこで、現在、私は、求職のメールに対しては、履歴書を送って頂いたりすることもなく、一律に、お断りのメールをお送りしています。

私は、何通か求職のメールをもらっているうちに、あるとき、同じ求職のメールとは言っても、1通1通に対する私の感じ方に差があることに気が付きました。

 募集していないとはいえ、窓口でお断りのメールを入れてしまうと、正直なところ、カチンと来る方もいるでしょうが、それでも、多くの方は、私がお断りのメールを送信したことに対する御礼のメールを返信してくれます。

 私としては、(偉そうなコメントかも知れませんが)返信メールを送っていただいた方には、良い気持ちがします。
送ってくれない方に比べると、「次は良い出会いがありますように」と、勝手に思ってしまいます。

 また、送っていただくメールも、その内容は様々です。

 以下が、今回の投稿をしようというきっかけになった出来事ですが、最近、すごく好感の持てる求職のメールに接しました。

 その方は、ある大学の3年生で、どうやら、学生の間のアルバイトとして、当事務所での採用を求めていたようです。
その方は、最初のメールで、当事務所にメールをくれた動機や、当事務所のホームページを見て、うちに好感を持ってくれたことなどを書き、合わせて、「雑用でも良いので、私を使ってくれませんか?」
といったことを書いてくれました。

 私が、いつもどおり、簡単に断りのメールを入れると、これに対して、もう1通、「忙しい中、返信ありがとうございました、別の場所を探してがんばってみます、そちらもがんばってください」
といった内容の返信をくれました。

 この方とのやり取りは、以上で全てです。

 以上のメールの内容は、骨子だけにデフォルメしてしまっていますので、私が、どこに心をひかれたのか、伝わりにくいかもしれません。
しかし私は、短いメールのやり取りをとおして、この方の人柄の誠実さや、当事務所では、きっと一生懸命働いてくれるんだろうなといった雰囲気を感じ取りました(ような気がしました)。

 このてのメールの作法については、キャリアコンシェルジュの他の先生のほうが、私よりもずっと専門ですから、そちらを参照してください。
私が皆さんに伝えたいなと思ったのは、
「メール(文書)には、その人の人柄が出る(ことがある)」
ということです。

  もし、皆さんが求人のメールを送った会社が、メールを第1次審査のように捉えていて、メールの内容をみて、採用の次のステップへの採否を判断していたとしたらどうでしょうか?
(もしくは、「履歴書のような書類選考で落ちない書類の書き方」ということにも共通すると思います)

 私は、書類の細かい作法を語る資格はありませんが、最近、何通か求職のメールに接するうちに、ふと、
「メール(書類)を見て、採用してみたいと思う方とそうでもない方がいる」
ことに気が付きました。

 もちろん、同じ文章を送ったとしても、読み手が、プラスに受け取ってくれるかそうでないかは、読み手の受け取り方次第のような面もあると思いますので、好感の持たれる文章の書き方というのは、実際には、言うは易く行うは難しなんでしょうね・・・。

 採用する側というのは、全く勝手なものです。

 それでも、採用する側の勝手な雑感として、今回の投稿をしてみました。

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平成21年6月

【法律事務所の仕事◇◆遺産分割◆◇~わたしはいくらもらえるのか~】

法律事務所で仕事をしていると、遺産分割の仕事を頼まれることがあります。
人が亡くなると、亡くなった人(「被相続人」といいます)の遺産について、相続人で分けることになります。
このとき、相続人の皆さんで話し合いがまとまれば、弁護士の出番はありません。
しかし、ときとして、相続人同士では、話し合いがまとまらないことも珍しくありません。相続は「争続」だ、なんて言われるゆえんです。

遺言書があれば、遺産分割を進める上での指針になるのですが、急に亡くなってしまったので、被相続人には遺言書もありません。
どうやって遺産を分けたらいいのだろう・・・。

このようなときのために、民法という法律には、遺産分割の目安が書いてあります。

今回は、「法律事務所の仕事」の3回目として、仮に、一家のお父さんが亡くなったとした場合に、各相続人がいくらもらえるのかご説明します。
気が向かれましたら、以下、法律の豆知識という感覚で、軽く目を通してみてください。

≪民法に書いてあるルールの説明≫

最初に、民法に書いてあるルールを説明します。
なるべくかみ砕いて書いてみました。
ある程度、内容を簡潔にするために、細かい説明を省いた部分もありますが、その点はご容赦ください。

【ルール1】
次の人は、相続人になります。ただし、次の人みんなが相続人になれるわけではなく、A→B→Cの順に優先します。
A 子供
B お父さんの親(子供から見れば祖父母)
C お父さんの兄弟姉妹(子供から見れば、おじ・おば)

【ルール2】
A~Cの中で、それぞれ複数の人がいた場合には、1人当たりの相続分(取り分)は、人数で均等に割り算します。

【ルール3】
奥さんがいる場合は、A~Cの人のほかに、奥さんも相続人になります。
A~Cの人がいない場合は、奥さんだけが相続人になります。

【ルール4】
奥さんとA~Cの人の両方がいる場合、両者の相続分は次のとおりです。
a 奥さんとAの場合は、1/2ずつ
b 奥さんとBの場合は、奥さんが2/3で、Bが1/3
c 奥さんとCの場合は、奥さんが3/4で、Cが1/4

≪ルールの具体例への当てはめ≫

以上のルールを当てはめていくと、相続できる金額は次のようになります。

【例1】
相続人が奥さんだけの場合
→ 相続人が1人しかいませんから、もちろん、奥さんが6000万円相続します。
* 【ルール3】を参照してください。

【例2】
相続人が子供1人だけの場合
→ お父さんが亡くなる前に、奥さんが亡くなっていたような場合です。
相続人が1人ですから、この場合も、1人の子供が6000万円相続します。
* 【ルール1】を参照してください。

もし、お父さんの親(B)やおじ・おば(C)が存命でも、これらの人は相続人にはなりません。子供(A)がいるので、子供が優先するからです。
* 【ルール1】を参照してください。

【例3】
相続人が子供2人の場合
→ 2人の子供が3000万円ずつ相続します。
長男・長女だから多くもらえるとか、逆に、末っ子ほど多くもらえるということはなく、兄弟姉妹はみんな平等です。
(ただし、子供の中に非嫡出子がいると、非嫡出子は嫡出子の半分です。)
*  【ルール1】と【ルール2】を参照してください。

【例4】
相続人が奥さんと子供3人だった場合
→ 奥さんが3000万円、子供たちは1000万円ずつ相続します。
*  【ルール1】~【ルール4】を参照してください。
a 「奥さん」と「子供たち3人の合計」は、1/2ずつです。したがって、奥さんは、6000万円の半分の3000万円をもらえます(【ルール4】)。
b 残りの3000万円を子供たち3人で分けますが、子供たち1人ずつの相続分  は平等なので、3000万円を人数で割って、1人当たり1000万円をもらえます(【ルール2】)。
【☆問 題☆】
お父さんが亡くなりました。
奥さんは存命です。お父さんと奥さんの間に子供はいません。
お父さんの両親は存命です。
お父さんには、兄が1人います。
6000万円の遺産は、どのように分けることになるでしょうか?

【☆答 え☆】
奥さんが4000万円相続します。
お父さんの両親は、1000万円ずつ相続します。

【☆解 説☆】
a 奥さんは、相続人になります(【ルール3】)。
相続人は奥さんと、お父さんの両親なので、奥さんは2/3をもらえます(【ルール4】)。
したがって、奥さんは4000円もらえます。
b お父さんの両親も相続人になります(【ルール1】)。
両親は、平等に人数割りしますので、残り2000万円を、半分の1000万円ずつ分けることになります(【ルール2】)。
c お父さんの兄(C)は、相続人にはなりません。
お父さんの両親(B)が存命なので、そちらが優先するからです(【ルール1】)。
合っていましたか?☆

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平成21年7月

【就職活動としての国家試験~最近、司法書士試験を受け終えた友人の話~】

7月は、国家試験の月です。
・・・と、私は勝手に思い込んでいます。

私がかつて受験していた司法試験は、山場と言われていた論文(筆記)試験が、毎年7月に行われていたからです。
昨日、改めて、インターネットで、いろいろな国家試験の受験日を見てみましたが、当たり前ですが、7月以外の月に行われているものもたくさんあります。私の完全な思い込みですね。

しかし、そんな私の思い込みを補強してくれる試験のひとつに、司法書士試験があります。(司法書士の先生がどんな仕事をなさるのかは、キャリアコンシェルジュの新谷先生の記事をご覧ください)

司法書士試験は、毎年、7月上旬の日曜日に試験が行われているようで、今年は、7月5日が試験日だったようです。
私には、今年、司法書士試験を受けた友人がおりますが、今回は、彼に主役になってもらおうと思っています。
主題は、就職に国家試験を選ぶのも、楽な選択ではないなぁということです。

彼は、Kさんという方です。

Kさんと知り合ったとき、私はまだ、司法試験の受験中でした。したがいまして、Kさんとは、かれこれ8年ほど前からの友人ということになるでしょうか。
Kさんは、私よりも2、3年上で、司法書士事務所に勤務しながら、もう、相当の回数試験を受け続けているはずです。
長年司法書士事務所で働いていますから、Kさんは、司法書士の実務には精通しています。
でも、勤務時間の合間を縫っての勉強時間しか確保できないためか、試験には、毎年、どこかでつまずいてしまい、涙を飲み続けてしまっているようです。

6月の終わりに、私が、「試験がんばってください!」というメールを入れたところ、Kさんは、型どおり、「ありがとう。がんばります!」という返信をくれました。
これだけのやり取りだとしたら、ここでわざわざ取り上げるには、平凡なやり取りだということになってしまうでしょう。

でも、Kさんのメールには、そのあとに文章が続いていて、
「勉強がきつくて、○○(予備校)のエレベーターで毎日叫んでます(笑)」
といった内容で結ばれていました。

Kさんは、ダンディな方で、人前では決して弱音を吐かない方です。
上の文章も、Kさんは、もちろん、笑いを込めて書いたものに過ぎないでしょう。ほんの軽い気持ちで書いただけなのかもしれません。
しかし、私は、Kさんの性格を知っているだけに、たとえ冗談交じりにせよ、Kさんが、こんなメールをくれたことに、かすかな衝撃を覚えてしまいました。
予備校で叫んでいるのはウソにしても、毎日毎日、本当に叫びたくなるような心理状態に追い込まれながら、必死に勉強を続けているんだろうなぁと想像してしまったのです。

そしてきっと、Kさんは、毎年、このように必死に勉強を続けてきたのです。
どれくらいの期間、Kさんは、こんな気持ちを抱きながら勉強を続けてきたのだろうと、その時間の重みにうたれてしまったのです。

試験が終わった日の夜、Kさんから、またメールをもらいました。
「過去最高の出来でした!」
という嬉しい内容です。

今年こそ、ダンディな友人の夢が叶うことを祈っています。

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平成21年8月

【法律事務所の仕事◇◆骨髄提供同意立会◆◇】

8月に入り、ようやく、夏らしい暑い日が多くなってきたように感じます。
皆さんはいかがお過ごしですか。
人から聞いた話ですが、夏は、就職活動がそれほど忙しくはない時期だそうで、皆さん、暑い夏をエンジョイできるといいですね。

さて、今回は、私が最近経験した、弁護士の仕事の中でも、(おそらく)めずらしい仕事についてお話しします。

「骨髄提供同意立会」(こつずいていきょうどういたちあい)
という仕事です。

世の中には様々な病気があり、病気に応じた適切な治療法は、日々、確立されていることと思いますが、それでも、骨髄移植でしか治療が望めない患者さんもいらっしゃるようです。
患者さんは、他の誰か(骨髄ドナー)から骨髄液を提供してもらい、これを自分の体に注入してもらうことで治療します。

ドナーが、患者さんに自分の骨髄液を提供する過程で、何回か、ドナーに対する説明・意思確認の手続が必要となりますが、その中で、私たち弁護士が関わる過程があります。
これが、「骨髄提供同意立会」という仕事です。
別名「最終同意」とも呼ばれているもので、この呼び名からも推測がつきますとおり、これは、骨髄移植を行う前に、ドナーの同意を確認する最後の手続です。
ドナーから最終同意が得られますと、患者さんは、骨髄移植へ向けた前処置と呼ばれる処置に入りますが、この処置に入った後に骨髄液の提供を受けられない事態が発生してしまうと、患者さんが死亡してしまうことも生じ得るようです。
そこで、ドナーの最終的な意思を確認させて頂く機会をもうけて、意思確認する者(立会人)として、弁護士が関わるのです(念のため付け加えますと、立会人は、弁護士でないといけないと決まっているわけではありません)。

最終同意は、ドナー、そのご家族、コーディネーター((財)骨髄移植推進財団)、医師、そして立会人弁護士が参加し、病院の一室で行います。
説明は、コーディネーターや医師の方が行います。
弁護士は、中立的な第三者として、ドナーやご家族が、説明を聞いて十分納得した上で同意してくれているかを判断するのが役割です。

ドナーの方は、仕事を休んだとしても休業補償などはもらえません(実費支払いや保険加入などはあるようです)。
したがいまして、現在、ドナーの方の想いがこの制度を支えているという側面が強いように感じます
私は、つい最近、都内の某病院へ、立会弁護士として赴きましたが、そのときのドナーの方からも、「病気に罹ってしまった人への善意」が伝わってきました(ちなみに、ドナーと患者は、お互いに相手の詳しい個人情報は分からないことになっています)。

いまの職に就いているために、感慨の深い仕事に携わることができたと感じています。

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平成21年9月

【とりあえず、本を1000冊読もう。(それらしく言うと、自分なりの教養の身に付け方)】

◎始まり・動機◎
この原稿をパソコンで打っている本日は、平成21年の9月9日です。
ふと思い出すと、12年前の平成9年9月9日は、私が、ふと思い立って、

とりあえず、本を1000冊読もう。

と決めた日です。

あれから12年経った今、849冊目を読んでいます。
(どうでも良いことですが、今読んでいるのは、D・カーネギーの「話し方入門」という本です。)

平成9年9月9日というと、私は、大学3年生でした。

このとき自分が何をやっていたかを思い出すと、その年の5月に初めて司法試験を受けましたが落ちてしまい、就職活動を始めたわけでもないのに、反面、司法試験にもいつ受かるか分からないという、就職という面から見ると、不透明な時期でした。
たぶん、そんな時期だったことも関係してか、何か、将来の自分の糧になる長期的な目標があれば良いなと思って、

とりあえず、本を1000冊読もう。

と決めたのだと、今から昔の記憶を呼び起こすと、そう思います。
(昔のことなので、はっきりしたことは忘れてしまいました・・・)

9が3つも付く日だったのは偶然ですが、たまたま縁起の良さそうな日だったことも、この目標が、いまだに長続きしている一因かもしれません。
ただ、「とりあえず1000冊読めば、何か違う世界が見えてくるかもしれない、自分の基礎のようなものができてくるんじゃないか」と思った記憶は残っていますので、当時の不透明さが、この目標を立てたことに影響したのは間違いないんじゃないかなぁと思っています。

もっとも、私は、もともと本は好きだったので、このとき、無理して本を読む習慣を付けたわけではありません。
実は、このとき自分を変えたところは何もなく、強いて言えば、この日以来、本を読んだら、タイトルと番号(トータルの冊数)をメモしておく習慣を付けたぐらいです。

◎そして今◎

以来、年間だいたい70冊ぐらい読み続けて、ただ今、849冊目です。
1000冊という数字は、計算上、あと数年で到達するところまで来ました(私の30代半ばです)。
まだ到達には一踏ん張り必要ですが、どうやら、目標を立てたときに感じたような、「何かが変わるかも」というほど、劇的な変化はなさそうです。
(少なくとも、今のところは感じられません・・・。どうしてもジャンルが偏ってしまうのも原因かもしれません)

良く考えてみると、年間70冊というのは、それほど多いペースでもありません。これ以上読んでいる人もたくさんいるでしょうし、現に、知人にも、そういう人を知っています。

それでも、たぶん、本を読まないよりは読む(読み続ける)ことで身に付いたもの、知ることができたこと、将来の自分を助けてくれることはあるんだろうなぁとも感じています。
たぶん、自分で、はっきりと気付いていないだけで、1冊目よりも今のほうが、自分の糧になっていることが多いのも事実でしょう。
1000冊になったとしても、それから先も、毎日、少しずつ読み続けることで、少しずつ自分の基礎ができていくのではないかなと思っています。

何も読書に限りません。こうした、自分のためになる習慣は、見つけ、続けていきたいなと思っています。

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平成21年10月

【法律事務所の仕事◇◆借金問題(つづき)◆◇~借金はなぜ減るか~】

今年(平成21年)の4月に、法律事務所の仕事として、「借金問題」をご紹介しました。
このときは、一度、サラ金からお金を借りてしまうと、なぜ返しても返しても借金が減らないのか、という法律の仕組みについて説明しました。
4月の記事では、終わりのほうに、
「実は、法律事務所では、【法律の枠組みの範囲内で、借金を減らすことができる】のです。」
と書いたまま、【法律の枠組み】については説明しませんでした。

今回は、せっかくですから、借金問題のつづきとして、そんな【法律の枠組み】について説明します。

例として、4月の記事で使った、
【平成21年4月1日に、50万円を、利息29%で借りた場合】
を引き続き使用します。

1 世の中には、たくさんの法律がありますが、そんな法律のひとつに、
【利息制限法】という法律があります。この法律には、
【50万円のお金を貸した場合、利息は18%までしか付けてはいけない】
と、書いてあります(*f)。

法律事務所では、借金返済に困っている人のご依頼を受けた場合、この法律に基づいて、
【現実には29%で借りていた借金を、仮に18%で借りていたものと再計算して、18%を超えて払いすぎていた利息は、元本に充当することができる】
のです。

ちょっと難しいですね。
どういうことか分かりますか?

2 【平成21年4月1日に、50万円を、利息29%で借りた場合】
を例にとって説明しましょう。

この例では、50万円を1か月間借りると、平成21年5月1日に、利息が約1万1900円発生することは、4月の記事で説明したとおりです。
しかし、仮に、
【50万円を、利息18%で借りていた場合】
には、1か月間の利息は、約7400円になります(*g)。

29%で借りていた場合と18%で借りていた場合とでは、1か月間で、利息に、約4500円もの違いが出ます(1万1900円-7400円)。
この4500円をどうするかというと、先ほどの
【現実には29%で借りていた借金を、仮に18%で借りていたものと再計算して、18%を超えて払いすぎていた利息は、元本に充当することができる】
というルール(これから,仮に,「☆ルール」と呼ぶことにしましょう)にしたがって、
【平成21年5月1日に、元本を4500円返して、残りの元本は49万5500円になった】
と計算するわけです。

つまり、この人は、
【平成21年5月1日に、利息7400円と元本4500円を返済した。したがって、残りの元本は49万5500円になった】
のです。

3 さて、この人が、6月1日にも、1万1900円を返しました。
この人は、現実には、利息29%で借りているわけですから、6月1日に1万1900円を返しても、
【5月1日から6月1日までの間に発生した利息1万1900円を返済しただけで、元本は50万円そのまま残っている】
はずです。

しかし、この人が、18%で借りていた場合はどうでしょうか。
18%で借りていたばあい、この人は、5月1日の時点で、すでに元本が49万5500円になっています。
したがって、5月1日から6月1日までの間に発生した利息は、元本49万5500円に対する1か月分の利息(約7400円)です(*h)。
この人が、6月1日にもまた1万1900円を支払ったとすると、先ほど挙げた☆ルールにしたがって、
【平成21年6月1日に、利息7400円と元本4500円を返済した。したがって、6月1日段階で、残りの元本は49万1000円(49万5500円-4500円)になった】
と計算できるのです。

*f 本稿で例に挙げている、サラ金業者が29%の利息で貸すのは、いわゆる「グレーゾーン金利」と呼ばれる利息で、刑事罰の対象になるような行為ではありません。なお、利息に関する法律は、現在、改正などで動きのあるところです。
*g 計算式は、【50万円×18%×(30日/365日)】です。
*h 本当は、【49万5500円×18%×(31日/365日)=7575円】です。ここでは、説明の便宜から、4月と同じく7400円にしてあります。

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平成21年11月

【法律事務所の仕事◇◆借金問題(つづき)◆◇~借金はなぜ減るか~(後編)】

4 【借金が減る仕組み】
が、だんだんとお分かりになってきましたか?
利息29%で借りていた場合には、ぎりぎり毎月の利息に当てるしかできなかった金額(1万1900円)を、☆ルールを使って、利息18%の計算のもとで返済していくと、毎月、いくらかのお金を元本に充当することができます。
したがって、この人は、
【毎月、元本が減っていく】
のです。

このようにして、
【平成21年4月1日に利息18%で50万円を借りて、毎月1日に1万1900円ずつ返済していく】
場合、この人は、
【平成26年11月1日の返済をもって、元本の支払いが終了する】
という計算結果が導けます。

しかし、くどいかも知れませんが、もし、この人が、利息29%での返済を続けていたとすると、この人が、毎月1万1900円ずつ、1回も怠ることなく返済を続けていたとしても、
【平成26年11月1日の返済時点での元本の残額は、依然として50万円】
なのです。

5 かくして、法律事務所では、借金の返済に困っている人からのご相談を受けた場合、
【利息を18%に下げると、その人の借金はいくら残っている計算になるのか】
という再計算を行います。

そして、【減らした元本金額】について、サラ金業者との間で、分割払いの約束を取り付けるなどして、その人に、無理のない借金返済のプランを提示するわけです。

【借金はなぜ減るか】
なんとなくその仕組みがお分かりいただけましたか?

6 さて、もうひとつ補足です。

【平成21年4月1日に、50万円を、利息18%で借りた】
場合、この人は、
【平成26年11月1日の返済をもって、元本の支払いが終了する】
計算結果が導けることは、先ほど説明したとおりです。

しかし、現実には、この人は、利息29%で借りていたわけですから、法律事務所に来ることなく借金の返済を続けていたとすると、この人は、
【平成26年11月1日の返済時点での元本の残額は、依然として50万円】
です。
したがって、この人は、平成26年12月以降も、知らず知らずに、毎月1万1900円ずつの返済を続けていくことは、十分に考えられます。
平成26年12月1日以降の返済は、すでに元本が0円になっているのにもかかわらずに支払っているお金ですから、
【支払ってしまったお金全額が、本当は支払う必要のなかったお金】
です。

払う必要のないお金を払い続けてきたわけですから、この人は、サラ金業者に対して、法律上、
【払いすぎたお金を返してくれ】
と請求することができます。

もし、この人が法律事務所に相談に来たのが、平成26年11月以降であれば、この人から依頼を受けた法律事務所は、この人に代わって、サラ金業者に対して、
【払い過ぎたお金を返してください】
という交渉を行います。
この払い過ぎたお金は、平成26年11月以降、長い期間返済を続ければ続けるほど、当然多額になります。
この、払い過ぎたお金の返還を求めることを、
【過払金返還請求】
などと呼んでいます。

最近、ちまたの広告などでも、【過払金返還請求】という言葉を耳にすることがあるかと思いますが、【過払金返還請求】というものの実態と仕組みは、以上に説明したようなものです。

だいたいお分かりになりましたか?

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平成21年12月

【がんばるSくんについて~朝の時間の使い方~】

早いもので、あと1か月もしないで2009年もおしまいです。

私は、いま、32歳です。
ことしも、公私ともに、いろいろな仕事や出来事があったはずですが、毎度のことながら、いざ1年を振り返ろうとすると、一番強く実感するのは、具体的な出来事よりも、「今年も早かったなぁ」という漠然とした実感です。

1年1年を早く感じるようになったのは、いつごろからなんでしょうか。
いつだって、過ぎた日々は早く感じるものだと言われれば、それだけのことなのかもしれません。

でも、いま、思い返してみると、小学校にあがった4月、これから迎える6年間が、永遠に思えたような、6年後の自分が想像の付かないほど遠い存在に思えたような、うっすらとした記憶が残っています。
「おれは、ずっと小学生のままなんじゃないだろうか?」
(良く考えれば、このときすでに、小学校の6年間と遜色ない年数を生きてきているわけですが(笑))

それがいまは、1日、1月、1年の早いこと早いこと。
少年老い易く・・・
という言葉を、実感している毎日です。


ここで、話が、タイトルのSくんに移ります。

かれは、私と同年齢で、大手生命保険会社に勤めている友人です。
かれは、新宿の会社まで、片道1時間ぐらいかけて、毎日8時に出社しています。

私の法律事務所では、朝はもっと遅くて、8時出社というだけでも大変だなぁと思うのですが、実は、かれの1日は、出社時間の遙か前から始まっています。

かれは、毎日5時ごろに起きて、1時間ぐらい、自分のための勉強をして、それから家を出るそうです。
聞いてみると、かれのしている勉強は、いまの仕事に直接つながるものもあれば、そうではない、将来の布石になるようなものまで、広い範囲にわたっているようです。
夜も、早く終わる仕事ではありませんから、かれは、睡眠時間を削って、勉強の時間を作っているようです。

以前、かれに、どうしてそんなにがんばるのか、聞いたことがあります。

かれは、はずかしがって(?)はっきりしたことは言わなかったけれど、どうやら、今の仕事が楽しくて、いままでに感じなかったようなやりがいを感じているように思えました。職場の仲間にも恵まれて、いまの職場にいることが、公のみならず、私への充実感も与えてくれているようです。
そういえば、かれは、何回か転職を経験していて、今回の職場も、最近移ったばかりです。
かれが、以前の職場が合わなくて、つらそうだったのを思い出しました。

とてもSくん並みにがんばるのは難しいでしょうが、私も、かれを見習って、せめて何日かに一度は早起きして、朝の自己啓発の時間を作らねばならないなと考えています。
1日30分だったとしても、積み重ねれば、大きなものになります。
とくに何もしなかったとしても、早く起きて完全に目を覚まして、すっきりした状態で職場に行くだけでも、寝起きで寝ぼけまなこで職場に行くときに比べて、朝の仕事が楽しくなるかもしれません。

自分の知り合いを見渡しても、朝の時間を有意義に使っている人に、
「デキルな!」
と思える友人が多いように思います。


でも、やっぱり次も寝正月になってしまうのかなぁ。

みなさん、良いお年を。

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平成22年1月

【良き人と知り合うことについて】

 キャリアコンシェルジュをご覧の皆さま,本年もよろしくお願いします。

 新年ということで,ちょうど1年前と同じく,年賀状にまつわる小さなお話をしようと思います(昨年の投稿を見ていただいた方は多くないと思いますが・・・)。

 私はいま,この仕事(弁護士業)を始めてから,5年と少しが経ったところです。
人と関わる仕事をしてきたせいか,ありがたいことに,年々,やり取りする年賀状の枚数が増えています。
昔から年賀状をやり取りしていた友人・親戚のほかに,年々,依頼者の方や,仕事を通じて新たに知り合ったさまざまな方との年賀状が増えているのです。

もちろん,たんに枚数の話をしたいわけではありません。

 新しく面識を得ることのできた方の中には,経験・スキル・人柄など,さまざまな点で,自分にないものを持っていたり,あこがれるものを持っていたり,気の合うものを持っていたり,助けてくれるもの・教えられるものを持っていたりして,
「知り合えて良かった☆」
と思える方がたくさんいます。

 私は,自分がとりたてて社交的だとは思いませんが,それでも,このような方と知り合う機会を持つことができると,うれしい気持ちになります。そのような方が増えていく今の自分の環境は,幸せだと感じます。
多くの良き人と知り合うことは,(文章で書くとなんだか大げさですが)自分の人生を豊かにしてくれるような気がしています。いま思うと,この思いを強く抱くようになったのは,平成19年の夏に独立開業してからでしょうか?

 きっと,皆さまにも,無二の親友や,大切にしている人がいることでしょう。
社会に出るということは,そのような人が増えていくチャンスを得ることだ,ともいえそうです。

 皆さまのこれからの長い社会人生活が,実り多いものになりますように☆

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平成22年2月

【がんばる30代?◆上 ~夜の喫茶店~】

 むかし、何かの本で読んだのか、誰かから聞いたのか、もう忘れてしまいましたが、
「(男の)30代は、仕事をバリバリやる期間だ! がんばれ!!」
と、読んだか聞いたかした記憶があります。

 そのとき、私は、確実に20代で(半ば頃だったかもしれません)、ふ~ん、そんなものか。でもまだまだ先の話で関係ないや。
と、思ったことを覚えています。

 しかし、その人の言っていたことは、その後も、何となく私の心に残りました。
もう少し補足すると、その人は、たしか、

 「 社会人として、ひとつの仕事を続けていく上で、30代というのは、もはや、新人として甘えることはできず、かといって、仕事に対するスキルは、まだまだ完成されていない時期である。
仕事には、『給料さえもらえればいいや』という姿勢で取り組んではならなず、自分に任された仕事は、自分で責任を持って受け持たなくてはならない。そのためには、自分から、進んで、仕事のスキルを高めるように努めなくてはならない。
そのために、30代は重要な時期だから、がんばって仕事に打ち込もう!」

 ・・・と、いったことを言っていたような気がします。

 いま、私は、33才になったところですが、確かに、20代の頃に比べると、仕事の量も責任も増えている気がします。
そして、これから身に付ける必要のある仕事上のスキルが、まだまだたくさんあるように感じています。

 そんなわけでもないのですが、私は、仕事の帰りに、家に直帰せずに我慢して(?)、喫茶店によって、法律書を読む時間を作ることがあります(気が向いたときにたまにですが)。
事務所にいるときは、どうしても他のことに気をとられてしまい勝ちなので、一つのことに集中するスペースとして、私の場合、喫茶店を利用しています。そして、自分の仕事の血肉にするために、法律書を読んでいます。

 もちろん、仕事に対する考え方は人それぞれで、答えは1つではないでしょう。
「30代はバリバリ仕事する」という命題自体、自分の考え方に合わないと感じる人も、いて当然でしょうし(私にしても、言うほど仕事ばかりしているわけではありません)、若いみなさんの中には、そもそも、30代になった自分をうまく想像できない人もいることでしょう。

 みなさんにとっては先のことだと承知の上で、先のことに対する、ひとつの参考までに、この文章を書きました。

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平成22年3月

【がんばる30代?◆下 ~勉強する時間について~】

 先月のつづきです。

先月読んでいただいたとおり、私は、今のところ、仕事を、自分の生活の重要な部分と考えて、熱心に取り組もうと努めています。
そして、自分のこのような考え方は、全ての人に「こうあるべきだ」と強いるものではなくて、仕事に対する考え方は、当然、人それぞれであって良いのだろうと考えています。

 しかし、私が、社会人になって、ひとつ、実感していることがあります。
それは、
「 社会に出てしまうと、いざ勉強しようと思ったときに、十分な時間を作るのが難しい。まとめて勉強しようと思ったら、学生のときが最高の環境だな」
と、いうことです。

 自分の学生時代をいま振り返っても、私は、余人に漏れず(?)、進んで勉強するほうではありませんでした。
遊びたい誘惑はたくさんありましたし、どうせ、今日も明日もあさっても学生なのだから、いざ勉強しようと思ったら、する時間はたくさんあるし、その気になればできるさ、ぐらいの気持ちでいたのです。

 しかし、いまになってみると、いざ自分の基礎学力を高めようと思っても、なかなかまとまった時間がとれないことに気が付きます。仕事に限らず、毎日の生活に追われてしまい、なかなか、学ぶことを目的とした時間が作りにくいのです。
(私の場合、時間の作り方が、決してうまくはないと思いますが)
皆さんがどのような学生生活を送っているのか分かりませんが、一般的に言って、手持ちの時間は、学生のほうが多いのではないでしょうか?

 お説教じみたことを言っても仕方がないので、私の文章はこのへんでお終いです。
いまの時間を大切に。
(勉強に時間を使うことが必ずしも大切だとは限りません。
何に時間を使うことが、いま、皆さんにとって有意義なのでしょう?)

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平成22年4月

【リーガルマインド?】

 新しい年度が始まりました。
桜が咲き,吹く風に暖かさを感じるようになると,うきうきしますね。

 そんな季節とは全く関係ありませんが,今回は,リーガルマインド(法的思考)に関する短いお話です。

 弁護士になるためには,資格試験に合格しなければなりません。
これは,法律家の適性をみるための試験ですので,たとえば,「文章を論理的に分析することができるか」,といったことが試験のポイントになります。
これが,リーガルマインドなどと呼ばれる能力ですが,私は,受験時代,試験問題として,パズルのよう問題も解いていました。

 たとえば,つぎのような問題です。
(いま,即席で作りました。現在の司法試験に,本当につぎのような問題が出るのかは分かりません・・・。)

『 ある試験に合格するための条件が2つあります。AとBです。
甲さんの学力だと,Aを満たし,かつ,Bを満たすときは合格できます。
乙さんの学力だと,Aを満たさず,または,Bを満たさないときは不合格です。
甲さん・乙さんでは,どちらのほうが合格の確率が高いでしょうか? 』

 * 余談ですが,甲(こう)・乙(おつ)という表現は,見慣れないものかもしれませんが,法律関係者の間では,良く使われる表現です。

 正解は,(いじわるかもしれませんが)「同じ」です。

 

Aを満たす

Aを満たさない

Bを満たす

     a

     b

Bを満たさない

     c

     d

甲さんが合格できるのは,「Aを満たし,かつ,Bを満たすとき」なので,aのときです。
乙さんは,「Aを満たさないとき」は不合格なので,b・dのときは不合格です。また,「Bを満たさないとき」にも不合格なので,c・dのときも不合格です。結局,乙さんは,b・c・dのときは不合格なので,合格するのは,甲さんと同じく,aのときだけになります。

 正解できましたか?
Aを満たす確率とBを満たす確率は果たして同じなのかとか,難しいことを言わないでくださいね・・・。

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平成22年5月

【そうか、同じなんだ!~仕事に向き合うこと~】

 「弁護士の先生って、仕事で悩むことがあるんですか?」

 先月のことです。
以前からの知り合いで、仕事をしたり飲んだりと、なにかと仲良くしてもらっているMくんという不動産屋さんから、仕事終わりに喫茶店で休憩中、突然、質問されました。
(ちなみに、Mくんは、私と同年齢です。ボディビルダーでマッチョな彼は、恐縮なことに、私に対して敬語で話してくれます。)
聞くと、Mくんは、仕事のことで悩み、眠れない夜を送ることも多いらしいのです。
「頭の良い人は仕事で悩むことなんて無いんじゃないですか?(悩むのは俺だけなのかな?)」
という次の質問が、Mくんの疑問の元のようでした。

 私は、即座に、Mくんの質問を否定しました。
「そんなこと一杯あるに決まってるじゃん!」
(ちなみに、私は、Mくんに対して、こんな感じで気安くしゃべってしまっています。)

仕事で悩む場面は、本当にたくさんあります。
Mくんと同じように、「あの仕事をどう進めていこう。」と思って、寝苦しい夜を過ごすこともあります。
ちょうど最近、私は、たいへんな仕事を抱えていたという個人的な事情もあって、Mくんの質問してくれた心境とは遠すぎて、だから、私は、Mくんの質問を、ほとんど反射的に否定してしまいました。
Mくん、そんなわけないじゃん。
(ついでに言えば,頭が良いと言ってくれたことも恥ずかしいです。)

 それから、コーヒーの残りをすすりながら、Mくんの質問を心の中で反復していると、こんどは、嬉しくなってきました。
そうか。
よく考えたら、私もMくんも同じです。
職種は違うけれど、私もMくんも、自分の携わっている仕事に、悩み、考えながら、苦労して取り組んでいることは同じだったわけです。
Mくんが質問してくれたおかげで、私は、自分だけでなく、同年齢のMくんも、苦労して仕事と向き合っていることに気が付きました。
Mくんも、同じだと気が付くと、「自分もがんばろう!」という気持ちが湧いてきます。
友人ががんばっているんだと思ったら、自分だけへこたれるわけにはいきません。

 Mくん、がんばりましょう!

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平成22年6月

【法律事務所の仕事◇◆離婚事件・上◆◇】

 学生の皆さんは,まだ,ほとんどの方が結婚されていないと思います。
だから,今回取り上げる離婚事件については,自分の体験としては未知のものという方がほとんどでしょう。

 私は,東京の多摩市という,ベッドタウンで仕事をしています。
このような地理的な要因が影響してか,近隣住民の方から多くのご相談をいただいております。
そして,近隣住民の方のご相談の中では,家庭内・親族間のもめ事に関するご相談が比較的多いように感じています。そして,その中では,「離婚」に関するご相談の占める割合が少なくないように感じています。
(法律事務所では,物事がうまくいかなくなってからご相談いただくことが多いのです。したがって,これから結婚しようと考えているふたりからご相談いただく機会はまずありません)

 私は,本稿で,離婚するのが,果たして,良いことなのか,悪いことなのかという事柄についてお話しするつもりはありません。
結婚・離婚に関する考え方は,それぞれの方の人生に大きく関わる問題ですから,簡単に,良い・悪いと言える問題でもないのでしょう。

 本稿では,
「離婚について夫婦の意見が一致しないときには,法的に離婚するのも簡単ではないなぁ」
という,法律に関係するお話をするだけに止めます。
結婚前の皆さんに,離婚のお話をするのも気が引けますが,皆さんに法律事務所の仕事をご紹介するという観点から,今回は,最近,比較的ご相談の多い離婚事件についてお話しします。

さて,結婚したけれど,どうにも,結婚生活がうまくいかなくて,離婚を考えた夫婦がいたとします。

 離婚に関して,夫婦お互いの意見が一致すれば,まだ話は簡単です。
夫婦お互いが離婚届を記入して,役所に提出すれば,離婚が成立します。
(細かく言えば,離婚届には,未成年の子がいる場合にはどちらかの親を親権者として届け出なくてはいけないとか,夫婦の他に誰か2名証人になってくれる人にサインをお願いしなくてはいけないなどの決まりもあります)

 これを,夫婦の協議で離婚したということで,
協議離婚
といいます。

 でも,そもそも,離婚するかどうかについて夫婦の意見が一致しなかったり,離婚については一致しているけれど,どちらが子供の親権者になるのかとか,夫婦で蓄えてきた財産の分け方などについて意見が一致しなかった場合,話は,ややこしくなってきます。
夫婦お互いの協議で話がまとまらない場合,離婚の手続きを進めるために,裁判所を利用する必要の出てくることがあります。

 でも,裁判所を利用するっていうけれど,裁判所では,どんな手続きを行うことになるのでしょうか。
ここから先は,次回,お話しします。

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平成22年7月

【法律事務所の仕事◇◆離婚事件・下◆◇】

 今回は,前回のつづきです。

 離婚について,夫婦お互いの話がまとまらなかったとき,裁判所を利用した離婚手続きに移ることがあります。
さて,裁判所では,どんな手続きが行われているのか,おおよその流れを見てみましょう。

1 調停

  最初に,「調停」という手続を行います。
これは,裁判所を利用した話し合いという性格の強い手続です。
みなさんに馴染みが深いのは,2でお話しする「裁判(訴訟)」のほうだと思いますが,「調停」は,これとは性質の異なる手続です。

  調停では,裁判所の小さな部屋の中で,調停委員という担当者2名(比較的年配で男女1名ずつのことが多い)に,旦那さんと奥さんが,入れ替わりで話を聞いてもらいます。基本的には,旦那さんと奥さんが同時に調停委員の前で話すことはなく,片方が話しているとき,もう片方は,別室で待機します。
部屋の中には,テーブルと椅子が置いてあって,座って話ができます。部屋は,一般家庭でも見られるような小部屋で,壁にも絵がかけてあったりして,なるべく和やかな雰囲気を作ろうとしているように思えます。また,訴訟とは違って,傍聴人が中に入ることもできなくなっています。

  つまり,調停は,相手方である夫(または妻)に遠慮することなく,プライバシーの確保された空間で,調停委員に自分の意見を十分に話してもらって,調停委員のアドバイスを参考にしながら,離婚に関する合意内容を決めていこう,というコンセプトで運営されているようです。

何度か調停を重ねて話がまとまると,裁判官が,調停で決まった内容をまとめた「調停調書」という書類を作ります。これで,離婚成立です。

2 裁判(訴訟)

  調停でも話がまとまらないと,つぎに,「裁判(訴訟)」手続に入ります。
裁判では,すでに,調停という話し合いベースの手続で離婚が成立しなかったという前提を踏まえていますから,この段階では,話し合いというよりは,お互いが証拠を出し合って,白黒をつけるという性格が強くなっています。
離婚したい当事者は,離婚に向けた証拠を提出し,反対に,離婚したくない当事者は,結婚生活の維持に向けた証拠を提出していきます。
そして,裁判官が,お互いが出し合った証拠を判断して,離婚を認める,あるいは,反対に,認めないという判決を出すことで裁判は終了します。

 このように,裁判所では,段階に応じて,性格の異なった手続きが用意されているのです。

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平成22年8月

【健康診断~自営業の自己管理~】

 7月26日に,ひさしぶりに健康診断を受けました。
場所は,東京都立川市にある弁護士会館内です。
私にとっては,ほんとうにひさしぶりの健康診断で,ふるい記憶をひも解くと,司法研修所に入所する前に受けたときまで遡りますから(たぶん),かれこれ7年以上前になるんじゃなかろうか。
ひさしぶりの注射器の感覚は,やっぱり,好きになれませんでした。
ほかの方が針を刺されても平然としているので,自分も平気なふりをするのに苦労しました(笑)

 会社に勤めると,定期的に健康診断を受ける機会があるかもしれませんが,私のような自営業者にとっては,自分で積極的に申し込まないと,診断を受ける機会はやってきません。
そうすると,自分で申し込むのはめんどうだし,自分では勝手に自分の健康に問題無しと思っているので,つい,行かなくなります。
今回も,長年,家族に「自営業者なんだから一度診てもらったほうがいいよ。自分が健康を害したら,食べていけなくなるんだから」と勧められていて,ようやく重い腰を上げたものです。

 たかだか健康診断に行ったぐらいで「自己管理」というタイトルをつけるのは,やや大げさかもしれないけれど,健康診断の受け方ひとつとっても,自営業者は,会社勤めの方とはしくみが異なるんですね。

検査結果はまだ出ていないけれど,たぶん,肝臓の数値は良くないんじゃないかなぁ。
と,いちおうは気にかけつつも,その夜も,気心知れた友人との飲み会なのでした。

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平成22年9月

【司法試験勉強中・その2~どうやったら点とれるかな?~

 このコーナーをご覧になっている方は,就職活動に関心のある方が多いのでしょう。
そんなみなさんに,どこまで参考になるか分かりませんが,今回は,私が試験勉強中に心がけていた,試験で点をとるコツ(のようなもの)をお話しします。

 ちなみに,本稿のタイトルは「その2」ですが,これは,2008年10月に、「司法試験勉強中」という文章を載せたことがありましたので,なんとなくその関連らしいタイトルを付けてみました。内容は関係ありませんので,その1は,あえてご覧いただかなくてけっこうです。

 私は,国家試験の勉強をして,幸いに合格して資格をとり,いまの仕事に就いています。
だから,いまの仕事に就くためには,試験に受からなければならなかったのですが, 「勉強しないと!」
と思うと,かえってやる気がなくなってしまう日も多く,勉強というものは,さぼろうと思えばいくらでも理由をつけてさぼれるので,はかどらない日も多い毎日でした。
私の場合,試験科目は6科目でしたが,比較的点数をとれる科目と,苦手な科目も分かれてしまい,苦手科目に足を引っ張られて落ちてしまう年もありました。
苦手なものはやりたくないので,いつまで経っても苦手が苦手のままで残ってしまいます。

 そんな中,あるとき気が付いた勉強方法がつぎのものです。

 ◆苦手科目を重点的に勉強する◆

 私の場合,試験科目は6科目でした。
そこで,どうするかというと,
a 最初に,その時点で1番苦手な科目を重点的に勉強して,その科目が,最低でも全体の3番目か4番目に点がとれる科目になるまで,がんばって集中的に底上げする。
b そうすると,つぎは,aの時点で2番目に苦手な科目が一番の苦手科目になっているので,こんどは,その科目を全体の3番目か4番目まで底上げする。
c 以下,これを繰り返す。

 ここまで読んでいただいて,「底上げする方法を教えてくれ」という声が聞こえてきそうですが,点をとる特効薬がないから,みんな苦労するんですよね(笑)

ミソは,一番苦手な科目を勉強しても,やっぱり自分にとって一番の苦手として残っているうちは我慢して勉強を続けて,その科目が,「自分にとっての苦手科目ではなくなるまで」一気に底上げしてしまうところです。

 偉そうなことを書いてきましたが,正直,いまから何か資格の勉強をしろと言われても,私には,できそうにありません。
試験勉強に集中するということは,相当のエネルギーを必要とする事柄で,ある種,若い人の特権とも言えるのではないでしょうか。
苦手な科目が得意科目になると,すかっとした気分になれます。

勉強方法なんて,人それぞれの意見がありますので,この文章も,一意見として,読み流していただけたら十分です。

 若いみなさん,がんばってください!

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平成22年10月

【司法試験勉強中・その3~受験仲間・上~】

 先月のこのコーナーに,私が試験勉強をしていたころ,自分なりに心がけていた勉強方法についての文章を書かせてもらいました。
先月の文章にも書きましたが,勉強方法なんて,ひとそれぞれですから,私が偉そうに「この方法が良い」って決めつけるものではありません。だから,あくまでも参考までの文章です。
今月と来月は,同じく私が試験勉強をしていたころの,一緒に受験勉強をした仲間についての文章です。
今回も,ご参考までです。

 私は,試験に合格するまでに6回受験しましたから,合格するまでにずいぶん時間がかかりました。
勉強に費やす時間は,予備校で講義を受けて過ごす時間だったり,1人で家や自習室で過ごす時間だったり,友人同士で集まって喫茶店で過ごす時間だったりと,いろいろでした。
一緒に勉強した友人も,先に受かった友人,私が受かった年にまだ勉強を続けてその後に悲願を達成した友人など,いろいろでした。

 さて,国家試験を目指す人には,社会人になって働きながら勉強をする人もいれば,仕事はバイト程度の人もいます。
私は,後者でした。

 仕事をしていないくせに甘ったれるな。

 と,言われてしまえばそれまでかもしれませんが,社会に出ないで勉強を続けていると,時として,周りから置いてけぼりをくっているような,社会から自分だけが隔絶されてしまっているような,出口のない閉塞感を感じてしまうことがありました。
社会に出ないで勉強を続けられる環境は,経済的に恵まれた環境でしょうが,このように,苦しさを感じてしまうときもありました。

 私は,独立心の強いほうではないと思います。
私が感じた閉塞感なんて感じずに勉強を続けられる人もたくさんいるでしょう。
でも,私は,そうではありませんでした。
ぽつんと自分だけが社会から孤立しているような気持ちになることがあって,そういうときは精神的につらいときでした。
(しかし,私が試験勉強をしていたのは,約8年前の2002年までのことです。なんだかんだで,のど元を過ぎた今となっては,たいへんだった日々のことは,嬉しいことに,実感としてどんどん忘れていっています。)

 それはともかく,どうにも1人で勉強を続けていくことにつらさを覚えた私は,受験勉強の後期になって,一緒に勉強する仲間を作るよう心がけることにしました。
これが,私の受験勉強の転機のひとつになったかもしれません。

 私は,司法試験という国家試験を受けていたのですが,司法試験の受験予備校でバイトを募集していましたから,そこでバイトを始めました。
他のバイト仲間の多くも,やはり司法試験の受験生です。
予備校でも,ある程度のレベルに達した受験生しかバイトとして募集しませんから,そこで知り合った受験生は,合格レベルまであと少しという人が多く,自分の勉強の励みにもなる仲間でした。
バイトで知り合った受験仲間と,一緒に勉強もしましたし,たまには飲みにも行きました。受験勉強に閉塞感を覚えがちな自分は,精神的にずいぶん助けられましたし,もちろん,こうした仲間と一緒に勉強することで,勉強のレベルアップにも繋がりました。

     (つづく)

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平成22年11月

【司法試験勉強中・その3~受験仲間・下~】

 私が予備校でバイトをしていた期間は,結果的に,自分の受験期間の最後の1年弱に過ぎませんでした。
バイトを始めた次の年の試験で合格することができたからです。
バイト先で知り合った仲間と良い関係を築けたことが,自分の合格を早めてくれたのかもしれません。

 さて,自分では,試験に合格した年も,合格する確信はとてもありませんでした。
すでに5回落ちていましたから,過去の例を踏襲されると,今年もダメかも・・・なんて思っていました。

 そこで,自分では,合格した年に落ちていたら,バイトの他に,もう1つ,やってみようと計画していたことがありました。

 それは,自習室への申込みです。
自習室っていうのは,受験業界ではどこにでもあるものでしょうが,ここで言う自習室というのは,ちょっと特殊なものです。

 司法試験の受験生だけが入室することができる,入室者だけのための有料の勉強スペースです。

 私は,司法試験の今の受験事情(新司法試験になって受験制度が変わっています)や,他の国家試験のことは知りませんが,私が受験勉強をしていた当時(2002年まで),月1万円ぐらいの会費制の自習室が,都内にある程度あったようです。
私は,合格した年に,もし落ちていたら,そんな自習室のどれかに入ろうと考えていました。
新宿に,予備校バイトで親しくなった受験仲間(Tさん)が入っている自習室があって,そこを第一希望に考えていました。机の数に限りがありますから,必ず希望どおりに入れるというものでもなかったようです。

 無料の予備校の自習室がある中で,あえて有料の自習室に入ることは,バイト生活の身にとって,そんなにたやすいことではありませんでした。
しかし,同じ様な環境・レベルにある受験生と交わって,良い刺激を受けることのほうが大切だと考えました。
わざわざ有料の自習室に入る人は,合格まであと一歩というレベルの高い人が多いでしょうから,そんな人と一緒に勉強する環境がほしいと思ったのです。お金を出せば,もったいないから,ある程度頻繁に通うでしょうし。
先月の投稿でも書きましたが,私の場合,1人で勉強を続けることに精神的なつらさを覚えていましたので,良い受験仲間がたくさんほしいという思いもありました。

 結局,その年,運良く合格することができて,私は,自習室へは入らずに受験期間を終えることができましたが,今でもたまに,もし新宿の自習室で,Tさんと勉強したり,勉強の後に安い居酒屋でうさばらししたりの1年間を送っていたら,それはそれで楽しい20代の1ページだったんだろうなと思うことがあります。
(もちろん,受かった今だから言えることでしょうけど・・・。)

 以上,とりとめもなく書いてきましたけど,私にとっては,良い仲間と勉強できる環境が,合格のための条件だったんだろうと思っています。

Tさんは,私よりは少しだけ遅れましたけれど,やっぱり合格して弁護士になり,今では,故郷で独立開業してがんばっています。
Tさんと会えるときは,お互いが受験生だったころよりは減ったけれど,今でもたまに会えば懐かしく,バカ騒ぎできる相手ですし,日々の弁護士業務で分からないことを電話で相談し合う,良き仕事仲間でもあります。

 予備校のバイトで出会ったTさん以外の仲間も,親しい6,7人のグループは,年度こそ違え,今ではみんな合格しました。たまに会えば懐かしい仲間は,Tさん以外にもたくさんいます。

 受験勉強はたいへんだったけれど,今に繋がる良い仲間もたくさん見つかって,私の最後の1年は,自分にとって宝のような時期でもあったと感じています。

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平成22年12月

【夜のモノレール】

 午前0時20分すぎ。

 多摩センター行きのきょう最後のモノレールが,事務所のすぐそばを通っていきます。
モノレールは,電車と違って,ゴトンゴトンというとぎれた音がしません。レールに継ぎ目がないからなのか,スーッという1本の音が近づいてきて,また消えていきます。

 生活にメリハリがなくなるので,極力やってはいけないと思いつつ,私は,たまに事務所に寝泊まりすることがあります(シャワー付きの部屋です。念のため(笑))。
0時を回ると,事務所のある多摩センター近辺も静まりかえっていることがあります。そんなとき,もう部屋の明かりを消して寝てしまっていると,モノレールの音も案外大きくて,その音で目が覚めることがあります。
暗い部屋からその音を聞いていると,闇から音が延びてきて,またスーッと,静かに消えていくように聞こえます。静かに暗闇から現れたモノレールが,また静かに暗闇の中に消えていくように感じます。

 時計を見て0時を回っていたら,きょうも最後のモノレールが行ってしまったなぁって思うことがあります。
なんとなく,消えていく音に,人のその日の生活の営みのおわりを感じて,ふたたび静まりかえった暗い部屋の中で,勝手に哀愁のような感覚を持つことがあります。

そんなとき,暗い部屋の中で,いろんなことが浮かんでくることがあります。
(どうも,夜に思いつくことは,あとから思い出すと,あまり前向きでないことが多いようです・・・。)

 職場で,1人静かにその日の終わりを(勝手に)実感する夜も,たまには悪くありません。
誰もいない静かな空間を独占する夜も,たまには贅沢な感覚です。

 こうして,今年も終わりが近づいてきました。
私の事務所も,年の瀬を迎えて慌ただしくなってきました。
1年を無事に終えるために,もう一ふんばりです。

皆さんは,今年やり残したことはありませんか?
私は,たくさんあります・・・。

 1つでも片づけて,よい新年を迎えましょう。

 皆さん,よいお年を。

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平成23年1月

【法律事務所の仕事◇◆刑事事件~接見・1~◆◇】

 明けましておめでとうございます。
本年も,キャリアコンシェルジュの担当をさせていただくことになりました。引き続きよろしくお願いします。
学生の皆さんは,学業に,就職活動にと,新年早々,忙しい毎日を送っているところかもしれませんね。がんばってください。

 私がこのコーナーを担当させてもらうようになって,もう2年以上が経ちましたが,そういえば,法律事務所の仕事のうち,刑事事件について正面から取り上げたことがまだありませんでした。

 新年最初の投稿は,私が,年末に体験したある刑事事件についてです。

 弁護士の仕事のひとつに,警察に捕まっている人に会いに行って,必要な法律上のアドバイスを行うことが挙げられます(警察に会いに行くことを「接見」といいます)。

 * 警察に捕まっている人は,起訴される前は「被疑者」(ひぎしゃ),起訴された後は「被告人(ひこくにん)」と呼び方が変わります。この稿では,便宜上,「被告人」という呼び方で統一します。

 ドラマなどで見たことがある方もいると思いますが,弁護人は,警察署内の狭い一室で,ガラス越しに被告人と対面して,話すことになります。

弁護人以外の一般の方,例えば被告人の親族や友人なども,もちろん被告人と会うことができます。
しかし,弁護人が会うときには,a警察官の立会人がいない状況で,1対1で会うことができること,b会って話す時間に制限が設けられないことなど,一般の方と比べて大きな違いがあります。
これは,弁護人が,このような条件の下で被告人にアドバイスを行うことが,彼らの権利を守る上で重要であることが承認されているからです。

 皆さんにとっては,自分が悪いことをして警察に捕まる事態は考えられないでしょう。
だから,被告人の権利と言われても,ピントこない方も多いかもしれません。
しかし,被告人の権利を守ることは,しかし,私たち弁護士の重要な仕事のひとつなのです。

                             (つづく)

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平成23年2月

【法律事務所の仕事◇◆刑事事件~接見・2~◆◇】

 私が被告人と関わるのは,常に仕事の上でのことです。
したがって,私は,今まで,常に1対1の状況で,被告人と会ってきました。

 だから,昨年末に面会した万引き(窃盗罪)の被告人と会ったときもやはり1対1の状況でした。

 彼は,30前後の男性で,私より何歳か年少でした。
彼は,過去に,何回か万引きなどをして警察のやっかいになったことがありました。捕まるごとに処分が重くなっていてき,今回は,初めて起訴されて,長期間の警察暮らしを経験している最中でした。

 長期間の警察暮らしや,初めて体験することになる刑事裁判など,彼は,多くの不安を抱えていました。そんな彼に,警察にいることになる見込み期間や,刑事裁判の仕組み,裁判の判決の見通しなどをできるだけ分かりやすく話してあげることは,とても重要なことです。
「この裁判は,多くて2回で終わるだろう。第1回目の期日が入っているのが12
月○日だから,第2回目は,12月○日ごろまでには入り,そこで判決が言い渡されて裁判は終わるだろう。裁判では,おそらく執行猶予が付く可能性が高いので,判決の日には警察署から出ることができるだろう・・・。」
などと話していくうちに,彼の不安が,少しずつ解消されていくように感じます。

 彼と同居しているご両親の話によると,彼は,ご両親の言うことを聞かない面もあるようです。ご両親も,自分たちのしつけがしっかりしていれば,今回の事態には至っていなかったのではないかと言っておられました。
しかし,私が会いに行くと,彼は,終始,物腰柔らかで丁寧な対応をしてくれます。
外界に出ることのできない彼にとって,今のところ一番頼りになる味方は私なので,当たり前と言えば当たり前なんでしょう。
私は,今までに高圧的な感じを受ける被告人と会った経験があまりありません(ゼロではありません)。この辺りは,弁護士の仕事の特性なのかもしれませんね。

 彼は,12月22日に,執行猶予の判決を得て,その日のうちに警察から出ることができました。判決の日には,ご両親も裁判所に来ていたため,彼は,裁判が終わった日に,ご両親と一緒に家に帰っていきました。

裁判の場でも,ご両親と一緒なれた後にも,彼は,私に,「ありがとうございました。もうしません」と繰り返していました。

本当に,そうあって欲しいものです。
新しい年が,彼と家族にとっても,良い年になりますように。

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平成23年3月

【O(オー)くんの結婚式~スピーチで心がけたこと~】

 3月5日,新宿で開かれた,中学・高校の同級生O(オー)くんの結婚披露宴に参加させてもらいました。入籍は,昨年のいい夫婦の日(11月22日)だったようです。

 結婚式には,今まで何度か出席したことがありますが,このときは,初めて,披露宴でスピーチさせてもらう機会がありました。
20年来の友人の晴れの舞台に指名してもらったわけですから,もちろん喜んで引き受けました。

 Oくんにスピーチを頼まれてから,仕事で電車に乗って移動しているとき,夜寝る前などに,ぼんやりと何を話そうか考えはじめました。披露宴の1週間ぐらい前には,考えたことを紙におこして印刷してみて,そして,披露宴の数日前からは,何回か声に出して読んでみて,実際にしゃべってみると違和感のある表現や気に入らない表現を手直しして・・・。

 こんなふうに,事前に準備していたことで,しゃべる内容は十分に固まっていて,不安のない状態になっていました。
(せっかく指名してくれた大親友に恥をかかせるわけにはいきませんよね!)

 そうすると,当日,大勢の知らない人の前でうまくしゃべれるかな?という実践の部分が,自分のなかに残った不安でした。
自分のしゃべる順番が来るころには自分はかなり酔っているだろうし,会場の雰囲気がどのくらい厳粛なのか,砕けた雰囲気になっているのかも分からないし,おまけ会場の規模も分からないし(Oくんに人数を確かめるのを忘れたのです)・・・。
実際にマイクの前に立ったときに,うまくしゃべれるかな?緊張して噛んでしまわないかな?というのが,残った不安でした。

 このうち,失敗しないために,自分の順番が来るまではお酒を控えておくという選択も人によってはありそうですが,自分は完全に好き勝手に飲んでいました。せっかくの晴れやかな場で自分だけお酒を控えてもつまらないですからね(笑)

 それで,どうしたかというと,私は,自分の順番が来るまでの間,会場を見回してみて,会場内部のつくりを見てみたり,どんな人が来られているのか,いつもより意識して参加者の顔を見てみたり,同じテーブルに座った人といつもより少したくさんしゃべってみたりしていました。
しゃべる場所,話しかける相手が,自分の知らない場所,知らない相手ではなくて,知った場所,知った相手だと思えるような気持ちを作り出してみたのです。

 けっきょく,このやり方が,どの程度役に立ったのかは分かりません。
隣りに座った同級生は誉めてくれましたが,お世辞かも知れないし,披露宴会場の華やかで祝福に満ちた雰囲気が,しゃべっているときの私を後押ししてくれたとも十分に考えられるでしょう。

 それはともかく,Oくんと奥さんの笑顔が印象的な披露宴でした。
Oくんが,これから奥さんとともに築き上げて行くであろう,堅実で幸せな家庭を祝福してやみません。

PS この文書が,みなさんの就職活動(面接試験でしょうか)の一助にもなれば幸いです。

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平成23年4月

【4月1日~新社会人になった夜~】

 東北地方を襲った大きな震災の影がいつになったら消えるのか,想像もつきません。
消えるどころの話しではなく,震災は起きてからまだ間がなく,多くの人にとって,生活の上にリアルタイムに存在する現実で有り続けています。

 東京に住んでいる私にとっても,震災の影は,生活から消えようとしません。
何事もないはずの普段の生活が,いかに危うい文明の上に成り立っていたのか,ふと思い起こされるような瞬間に,毎日の生活の中で必ず遭遇します。
たとえば,身近なところでも,電車を待つとき,コンビニに欲しい物を買いに行ったとき・・・。

そんな私が,震災のあと,初めて都内の夜を歩いたのは,3月22日のことでした。
夜,都内で仕事があって,帰りの電車の乗り換えと,夕食でも食べようかと思って新宿の街に出ました。震災から間がない新宿の夜は,何事もなかった昔に比べて,街は暗く,人は少なく感じられました。

 私が,2度目に夜の新宿の街に出たのは,4月の最初の金曜日でした。

 この日,地方に転勤していた友人が,土日を,家のある東京で過ごすために帰って来ようとしていて,その途中,久しぶりに会うことになったのです。
夕食を食べに行ってから10日ぶりに新宿に行こうとしていた私は,友人に久しぶりに会うのはもちろんうれしかったけれど,10日前に記憶した街の暗さを思い出して,いまひとつ浮き切れない気分で上り電車に乗っていました。

私が新宿に着いたのは,夜9時を少し回ったときでした。

改札を出て街に出ると,私は,すぐに,街にあふれるエネルギーを感じとりました。
まだ,普段と比べると,新宿の街は,ネオンは暗いし,いつもの金曜日に比べると,人通りも少なかったのではないでしょうか。
しかし,街中のいたるところに,新しいスーツに身を包んで談笑する,何組もの新社会人のグループを見つけたのです。

 そうか,きょうは4月1日だったんだ。

 この日が社会人生活の記念すべき1日目,あすからの新生活に,希望に燃える多くの新社会人たちが,初日の歓迎会を終えて,お店から出て談笑する場面に行き交う幸運に,私は恵まれたのです。

 私は,自分の社会人生活を,法律事務所の勤務弁護士としてスタートしました。
ここは,スタッフの総勢が5,6人のところでしたから,同期入社が何人もいる環境に,私は,身を置いたことがありません。
だから,私にも,もちろん社会人になった最初の日というのはあったけれど,会社の同僚になった仲間たちと,これからの社会人生活の健闘を誓い合う場面は自分の体験としては持っていません。

この間見た街の暗さが記憶に残っていた私は,この日の光景を,その分余計に,熱気にあふれたものと感じとったのかもしれません。
しかし,とにもかくにも,私には,どのグループも,若くて,前向きな熱気にあふれているように感じられたのです。

 この日第一歩を踏み出した新社会人に幸あれ。

 そして,これを読んでくれている未来の新社会人たちも,充実した社会人生活が待っていますように。

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